水素水についての考察 その8 「水素は体のどこまで行き届くのか」

水素水を飲んだ場合どこまで水素が行き届くのだろうか

ここまで水素豊富水自体の働きや販売業者が実際どのように謳っているのかについて調べてきた

そこで分かったことの一つは現在「水素水」として販売されているのは水素分子を水の中に溶かしたものがほとんどであるということであった。

それであれば、次に知りたいことは水の中に入った水素分子は実際に飲んだ時にどこまで身体に行き渡るのかということである。

私の予想ではせいぜい胃までという予想だが、どうだろう。

水素分子の速度ってどれくらいなの?

基本的な所から始めよう。

そもそも水素分子はどれくらいの速さで運動しているのだろうか?

言い換えれば1秒間にどれくらいの距離を進むのだろう?

それが分かれば一つの指標となるかもしれない。

さて、水素分子に始まり分子や原子の速度(ここでは平均速度のことを言う)を出すとなると、統計力学を引っ張り出してこなければならなくなる。

大学で理系の学部を出ている方はご存知かもしれないが、そうでない方にとっては理解するのに少々骨が折れるだろう。

以下では少し専門的な用語や解説が出てくるので、煩わしい方は飛ばしてここから読み始めると良いだろう。

統計力学によるところでは分子の平均速度は

V = √(8kT/πm) – (1)

k:ボルツマン定数 T:温度 π:円周率 m:分子一つ辺りの質量

と表される。

こちらの式の導出は熱力学と統計力学の知識を使う。

水素豊富水についての議論からそれてしまうため、ここでは導出を省略させていただく。

もし知りたいという方はこちらサイトが比較的分かりやすい。

第1部の「マクスウェルの速度分布」から「分子の速さと温度の関係」まで読めば導出過程が書かれている。

といっても理系の大学1年生程度の微積分の知識がないと理解するのは難しいだろう。

理解しようとする情熱のある方は大学1年生用の微積分から初めて、面倒だという方は読み飛ばしていただくのが良い。

ともあれ、(1)の式にボルツマン定数1.38x10^(-23)、円周率3.14、温度は冷蔵庫の温度5℃として絶対温度であらわすと278K、アボガドロ数を6.02×10^23とすると平均の速度は

V ~ 1714m/sec

およそ1714メートル毎秒となる。

つまり、水素分子は1秒間に1714メートルもの距離を移動するということだ。

これを時速に直すとおよそ6170km/hとなる。

新幹線でも300km/hということは新幹線の20倍の速度で水素分子は移動しているということになる。

では、水素水と書かれたボトルなりパウチなりのふたを開けて間髪開けずに水素分子を水と一緒にごくっとした瞬間から1秒後、水素分子はまっすぐ飛んで行って1.7km先の隣町までいっているのだろうか?

答えはもちろんNoである。

水素豊富水の中であれば水分子や水素分子と、胃や腸などの生体内であればリン脂質二重層と衝突するため、まっすぐ飛んではいかずあちらこちらに方向にその速度で跳ね返りながら運動していることになる。

そして次に問題になるのは果たしてリン脂質二重層などの生体膜を通過できるのか、また通過できるのだとしたらどれくらいの速度で通過できるのかということである。

まず、生体膜を透過できるかどうかについて論じてみよう。

食道や胃の生体膜はリン脂質二重層という外側に親水性を持つ部分と内側に親油性を持つ部分がある。

水素が水に溶けるかどうかは前のページ「水素水についての考察 その7 「水素は水に溶けるのか」」にて論じてきたことなので溶けることが分かっている。

次に親油性の部分についてだが、水素分子自体無極性分子であり、無極性分子というのは疎水性を持つ、すなわち親油性になる。

親油性の物質に親油性の物質は容易に入っていくことが出来る。

油の中に油を溶かすことと同じだからだ。

このことから胃などの生体膜を水素分子は透過できるといえる。

透過できると言えるが、果たして実際に透過するのだろうか?

というのもリン脂質二重層にも活性酸素が存在しするので、そこを水分子が通過している間に水素分子が活性酸素と反応し、水になってしまうこともあるためだ。

水に充填できる1.6ppmという割合を考えても水素の量は十分とは言えない。

1リットル(=1kg)の水素豊富水を飲んだところで1.6mgの水素しか取れないからだ。

1.6mgの水素中にはいくつの水素分子が含まれているのだろう、計算してみよう。

水素の分子量は2g/molだから1.6mgの水素は8*10^(-4)molということになる。

アボガドロ数を6.02×10^23とすると水素分子の個数は

8*10^(-4) × 6.02×10^23 = 48.16×10^19

ということで水素分子が1.6ppm溶けている1リットルの水の中には48.16×10^19個の水素分子があるということになる。

つまり、約5,000京個水素分子が入っているということだ。

活性酸素のwikipediaにある「活性酸素は1 日に細胞あたり約10 億個発生」を信じると人間の細胞は60kgの成人で37兆個という論文があるので、活性酸素は1日当たり、一人3.7×10^24個の活性酸素が発生することになる。

ということは1リットルの水素豊富水を飲んだ時には、体の320分1の活性酸素の1時間当たりの発生量と同じ量の水素分子を取り込めるということになる。

320分の1というのはどれくらいだろうか?

60kgの人の体積が0.07m*3とすると320分の1は219cm*3、220ml程となる。

口と胃と食道の表面から1cmくらいなら320分の1くらいの量になりそうだ。

まとめると、水素分子1.6ppmが混ざった水を飲んだ時は口から胃にかけての1cmの細胞に1時間で溜まる活性酸素と反応してくれることが期待されるのだ。

しかしこれはあくまで机上の計算と推測の域を出ておらず、実際は1cm以上の深さに水素分子が潜っていくこともあるかもしれない。

分子状水素医学生物学会理事長、日本医科大教授、太田成男氏によるとこの1.6ppmという量の「180分の1でも抗酸化効果を発揮することが分かっている」とのことだ。

ちなみに拡散速度としてはグレアムの法則というものもある。

「気体の拡散速度は、気体の分子量の平方根に反比例する」というものだ。

二つの気体の拡散速度を比べたいときなどに使われる。

気体1の速度をV1、分子量をM1、気体2の速度をV2、分子量をM2とすると

V1/V2 = (M2/M1)^(1/2)

と式に表される。

ここでは水素と何か比べたいので良く飲む水に溶けた気体、炭酸飲料に含まれる二酸化炭素で比べてみようと思う。

水素の分子量は2、二酸化炭素の分子量は44なので二酸化炭素の拡散速度を1としたとき水素の拡散速度V

V/1 = (44/2)^(1/2) ~ 4.7

となり、水素分子は二酸化炭素分子に比べて4.7倍の速度で拡散していくと言える。

もっとも、二酸化炭素の場合は炭酸イオンとして体内に入ってくるので生体膜の性質上、イオン化したものはリン脂質二重層の親油性の部分にはじかれてしまう。

体内に取り込まれるにはイオンチャネルと呼ばれる膜貫通タンパク質を通らなくてはならないため、水素に比べて拡散得度はより低いものになるだろう。

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